インフレ率2%達成の鍵は、格差解消の決定打「ベーシックインカム」である理由 | 山崎元のマルチスコープ | ダイヤモンド・オンライン
【簡易要約】
- 日本のインフレ率が上がらない理由=「消費者物価指数は『貧乏人物価指数』」仮説
- インフレ率2%を達成する鍵がお金持ちと貧乏人の格差解消であり、そのための秘策が「ベーシックインカム」
富裕層向け商品ばかり物価が顕著に上昇している「K字経済」という現象
- お金持ちでなければ買えない高額物件が値上がりする一方で、中所得層以下向けの物件の価格は下がる現象
お金持ち・貧乏人の定義
- 所得税率が最高税率(年間所得は4000万円超から)に達しない人が「貧乏人」
- 資産から生じる年間所得が年間の生活費を大きく超えるような人が「お金持ち」
- 「高給」と言われる大手総合商社のような会社に勤めていても「貧乏人」だ
消費者物価指数が上昇しないサイクル
- 一般的な社員は、賃金の伸びを抑えられ消費を増やす余裕がない
- 企業側は、顧客が価格に敏感であることを嫌というほど知っているので、なかなか「値上げ」に踏み切れない
- ほぼ「貧乏人物価指数」であるところの「消費者物価指数」は上昇しにくい
「格差解消」にベーシックインカムが必要な理由
- お金持ちから、かなり大きな規模で富の再分配を行うことが必要
- 最低賃金の引き上げは雇用機会の減少要因
- 企業を通じて富の再分配は、経営・経済の合理性からうまくいくとは思えない
- 必要なのは公的な再分配強化であるベーシックインカム
ベーシックインカムへの反対理由「財源がない」
- 例えば、ひと月5万円のベーシックインカムなら、国民の中位値よりもリッチな人にひと月8万円増税(5-8=-3万円)
- 中位値よりもプアな人に2万円増税(5-2=3万円)
- リッチからプアにひと月3万円の富の移転が完成
現実的な「小さなベーシックインカム」の導入
- ひと月5万円のベーシックインカムは、年間約75兆円の財源が必要
- 生活保護や公的年金、雇用保険などをすっかりベーシックインカムに置き換えるのは個々の国民にとって損得が大き過ぎて難しい小さなベーシックインカムを導入で不要になる社会保障を徐々に縮小して、結果的に置き換えていく
- 注意点はまず再分配を成功させて、十分なインフレ率が達成後に増税
具体的な手順
- いきなりベーシックインカムは実現しそうにないので、「ベーシックインカム的」な政策で似た効果を出すこと
- 「お金持ち」のメリットになる政策だけで力ずくのインフレ率上昇は困難
- 格差解消のための再分配が政策の急所
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衆院選前でかつ、各政党が公約を検討できる今の時期にこのような提言を行う山崎氏には頭が下がる思いです。
選挙時にはこちらを思い出し、投票基準に据えたいです。
実際、国内では既にあるサービスの過当競争に追われ、新たな価値の創出は出来ていない現状の日本。
働く人は消耗していき、そのせいもあってかFIRE(早期リタイア)を目指す人が増えている理由となっている背景が伺えます。
もう少し肩の力を抜いてリラックスしたほうが、すべてにおいて上手くいくと分かっていても、仕事は自分たちの生活がかかっているため、リラックスしたものからふるい落とされていく資本主義社会では、それも困難です。
突き詰めると、ベーシックインカムのようなライフラインの担保が用意されていれば、その他の規制緩和、例えば解雇規制に対して従業員側も納得しやすくなるでしょう。
また、ベーシックインカム実施の最大の壁は、公務員であるかもしれません。
民間企業の従業員たちが解雇規制で失業しやすくなりますが、公務員の一部の人たちはベーシックインカム導入で、自分たちの仕事が不要になるからです。
その意味でも難しくはありますが、政治家の方々には何としてでも成し遂げてほしい政策の急所が「格差解消→公的な富の再分配→(小さな)ベーシックインカム」の流れです。